自治体が続々とプロジェクトを開始 電動バイク普及へ

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自治体が続々とプロジェクトを開始。 電動バイク普及の方向性を探る。
電動バイクが続々と登場し、自治体は環境対策に活用しようと注目している。神奈川県は、電動バイクのモニター調査、レンタルビジネスの可能性調査、試乗会を実施して、普及の方向性を探っている。大阪府では業務でバイクを利用している約2,000の事業者にアンケートを実施し、電動バイクの導入意向を尋ね、さらに16の事業者に車両を貸与してモニター調査を行っている。浜松市でも市役所や金融機関が電動バイクを試験運用。埼玉県と熊本県では、自治体とホンダが提携して、電気自動車や電動バイクの社会運用システムを構築し、実証実験を行う。

バイクの運転トレーニングは楽しい!近ごろ人気のライディングスクール 二輪の世界にもエレクトリック・ビークル(EV)の時代が幕を開けた。ヤマハは昨年9月から電動パーソナルコミューター「EC-03」を発売し、ホンダは12月に業務用電動バイク「EV-neo」のリース販売を開始、スズキも電動スクーター「e-Let's」の公道走行調査を開始するなど、2010年はまさに“電動バイク元年”といった様相を見せた*注。  クルマの世界では、本格的なエコロジー社会を目指して、環境対応車への関心が非常に高まっている。そこに電動バイクが加わることで、交通分野における省エネルギー政策はいっそう視野が広がるものと見込まれる。注目の電動バイクが、これからどのように社会に馴染んでいくのか、いくつかの自治体が進めている“普及促進プロジェクト”にその手がかりを探った。
*注:いずれの電動バイクも定格出力が0.6kW以下となっており、原付一種に定義される。

自治体が電動バイクに注目しはじめた

注目される電動バイク(ホンダの発表会)国内のCO2総排出量のうち、自動車などの運輸交通によるものは約20%を占めており、政府はこの分野のCO2削減を喫緊の課題としている。その対策として大きく期待されているのが電気自動車など“次世代環境車”の普及拡大だ。
 このため、環境省、国土交通省、経済産業省は、エコカー減税やエコカー補助金の実施に加え、電気自動車やハイブリッドカーの技術革新を中心に、官民が一体となって取り組むべき課題を挙げて、さまざまな事業を進めてきている。しかし二輪車は、そうした施策からは一部対象外とされてきた。
 そうしたなか、経済産業省が2008年4月に打ち出し、全国の地方自治体に呼びかけて取り組んでいる「EV・PHVタウン構想」は、現在、各地で具体的な進展を見せており、電動バイクが続々と登場したことで、いよいよ二輪のEVにも注目する自治体が現れてきたのだ。
そもそもこの「EV・PHVタウン構想」というのは、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッドカー(PHV)*注の初期需要を創出する目的で、充電インフラの整備や普及啓発など自治体が率先してモデル事業を行い、その成果を全国に波及させていこうという取り組み。2009年3月には、青森県、新潟県、東京都、神奈川県、愛知県、福井県、京都府、長崎県の8自治体がモデル地域として選ばれ、それぞれ独自にプロジェクトをスタート。さらに2010年12月には、栃木県、埼玉県、静岡県、岐阜県、大阪府、岡山県、鳥取県、佐賀県、熊本県、沖縄県の10自治体が加わり、実施エリアは急速に広がっている。
プロジェクトの内容は自治体によってさまざまだが、このタウン構想のなかに、あるいはタウン構想に並行して行う事業として、電動バイクの普及促進に取り組む自治体が出てきた。具体的には、埼玉県、神奈川県、静岡県、大阪府、熊本県がプロジェクトを立ち上げており、電動バイク市場が成り立つ条件や可能性を探っている。
注:プラグインとは、充電設備からコードで直接つないで充電できるように差し込みプラグが車両に備わっていること。

価格の安さとソフトさが魅力――神奈川県

新横浜駅の駐車場に設けた充電スタンド2006年から電気自動車の普及に取り組んでいる神奈川県では、2014年までに県内に3,000台を普及させる計画だ。公用車への率先導入、導入時の補助、税の軽減、駐車場や高速道路料金の割り引きなど、さまざまなEV優遇措置を検討・実施している。また、充電インフラの整備も進めており、2014年までに県内に急速充電器や100V・200Vコンセントの設置を進め「EV充電ネットワーク」づくりを目指している。さらに、EVの試乗が可能なイベントやフォーラムを開催したほか、学校での環境学習の教材としてEVを活用したり、企業にEVを貸与するなど普及啓発も盛んに行ってきた。
  そうしたなか、EVの車種を四輪車のみならず二輪車に拡大。同県では電動バイクの体験機会を創出し、活用の可能性を探るなどの目的で、2010年9月からヤマハやマツダレンタカーなど民間企業と連係し、「かながわEVバイク普及推進プロジェクト」をスタートさせ、次の3つの事業に取り組んでいる。
(1)「パーク&チャージモニター事業」
新横浜駅の近くに充電可能な駐車場を設置したうえで、電動バイクを6人のユーザーに貸与、車両や充電器の使用状況などのデータを収集する。
(2)「レンタルモデル事業」
横浜市内のマツダレンタカーに電動バイクを計4台配備。市内観光や地元住民の散策の足として、1時間500円で貸し出し、レンタルビジネスの可能性を探る。
(3)「試乗会」
2010年9月から11月まで横浜市内など県内5カ所で電動バイクの試乗会を実施。毎回50~100人以上の体験者があり、その感想などを同プロジェクトの専用Webサイトで紹介している。
「かながわEVバイク普及推進プロジェクト」ホームページ
電動バイクの試乗会は好評
また、同県は県内有数の観光地である箱根町と各EVメーカー等と連係し、箱根町におけるEVの利用拡大を図る「箱根EVタウンプロジェクト」にも取り組んでおり、そのなかで、箱根町でも観光客等を対象にEVバイクのレンタルを実施した。事業を推進している県環境農政局環境部交通環境課の山口健太郎さんは、「電気自動車の普及拡大には、EVの車種を増やすという一つの課題があり、二輪のEVが登場したことは、交通社会のトータルな電動化を進める上で重要なことです。四輪の電気自動車よりもはるかに求めやすい価格帯にある電動バイクは、“最も身近なEV”として普及する可能性があると思います」と話す。
  今回取り組んでいる事業の結果報告は、今年度末までにとりまとめる予定で、詳しい経過は公表されていないが、山口さんは電動バイクの試乗会を通じて、次のような手応えをつかんでいる。
  「電動バイクを試乗した方々のお話では、実際に走らせてみると、バイクに抱いていたイメージが変わるようです。静かで、振動がなくて、車体もスリムで軽いため、取り扱いに不安感がないという意見です。“ちょっと試してみよう”と思わせるソフトさが、ユーザーを増やすカギになるかもしれません」

地元に新しいビジネスの創出を図る――大阪府

弁当店でも試験利用大阪府では、2009年6月に「大阪EVアクションプログラム」を策定し、2011年度末までに1,000台の電気自動車を普及させる計画だ。
  そもそも電気自動車を普及させる目的は、環境に優しい社会づくりをするためだが、大阪府の場合、パナソニックや三洋電機など蓄電池のメーカーが地元にあり、産業の振興にも大きな期待がある。
  同プログラムを策定した商工労働部新エネルギー産業課では、「電気自動車に関して、蓄電池をはじめ、EVの特有部品の製造や、関連するサービスなど新しいビジネスの創出につながると考えています。大阪は原付一種の保有台数が全国1位なので、電動バイクについても、部品供給などに地元企業が参入する可能性も含めて市場創出を促したい」と説明する(同課・松尾頼房さん)。
  現在進んでいるのが、2010年12月から始まった「事業用EVバイク普及モニタープロジェクト」。これは、新聞販売店、酒店、フードデリバリー店、金融機関、OA機器会社、ビル管理会社、警備会社など、府内で二輪車を利用している事業者(約2万件)のなかから、アンケート調査への協力事業者(約2,000件)を選び出し、業務用二輪車の利用実態や電動バイクの導入意向を調べるもの。
  さらに、そのなかからモニター調査に協力してもらえる事業者を抽出し、ヤマハがモニター用に製作したビジネスタイプの電動バイクを貸与。業務に2週間使用してもらいGPSによる走行実態や、利用のメリット、デメリットを明らかにする。今回、モニター車両は4台用意してあり、大阪府内で合計16の事業者を対象に順次調査を進めていく予定だ。
  松尾さんは、「大阪市内で行ったモニター調査では、新聞店2店と、お弁当店1店、宅配ピザ店1店の4事業者に協力をいただきました。電動バイクは音が静かなため、新聞店では『早朝の配達でも気兼ねなく走れる』とのこと。弁当店では『燃料切れのときガソリンスタンドが休みで困ることがあったが、充電式ならその心配もない』とのことでした。電動バイクは地球環境に貢献しているイメージが高く、『ガソリン車より価格が高くても購入したい』という事業者も少なくありません」という。
調査は今年度末までに結果をまとめ、3月24日(木)~26日(土)に大阪市で開催される「大阪 新エネルギーフォーラム」をはじめ、学会やセミナーなどで広く紹介する予定で、「電動バイクの市場形成に役立てたい」と、松尾さんは話している。

“バイクのふるさと浜松”も電動バイク普及へ

走行式で走る電動バイク「EV・PHVタウン構想」に選定された静岡県では、“バイクのふるさと”である浜松市の取り組みが注目されている。同市では、2010年5月に、スズキ、ヤマハなど地元企業や静岡大学など15の企業・機関が参画する「はままつ次世代環境車社会実験協議会」を発足。“ものづくり”に携わる中小企業を含む産官学の連携によって、EVに関する新しい技術やビジネスモデルを開発し、その普及拡大に取り組んでいる。
  昨年10月7日には、電気自動車をベースに発電用のエンジンを搭載したスズキの四輪車25台と電動スクーター「e-Let's」2台、ヤマハの「EC-03」8台などが市役所や金融機関に無償供与され、試験運用開始に当たって走行式が行われた。出席した鈴木康友市長は、「輸送機産業で発展してきた浜松市は産業構造の転換期を迎えている。次世代環境車についても、地域の連携を強くして、産官学が一体となった取り組みを進めていきたい」と話した。
スズキが開発した試作車「e-Let's」同市におけるEVの試験運用は、車両の実用性や利便性を検証し、環境負荷軽減につながる交通体系のあり方を探るもの。2011年8月までを第1期の社会実験とし、それ以降は、愛知県と長野県の一部を含む「三遠南信地域」へと範囲を拡大。充電インフラの整備なども含めて、2012年度末までを“第2期”として取り組みを推進していく計画となっている。
  同市商工部産業政策課の原田憲治さんは、「EVの試作車については、利用者の日報、アンケート、ヒアリングなどを踏まえて、利用ニーズや顧客層を分析し、製品の改良に反映したいと考えています。すでに市販されているものについては、どのような利用形態が有用かなど、現行の交通機関等と対比しながらユーザーの満足点を探っていきたい。浜松は“バイクのまち”なので、二輪車愛好者が多く、きめ細かな意見が収集できると期待しています」と話している。

自治体と自動車メーカーが共同プロジェクトを推進

ホンダのソーラー充電ステーション一方、埼玉県とホンダは、2009年3月に「環境分野における協力に関する協定」を結び、2010年12月から「次世代パーソナルモビリティ実証実験」に着手し、施設や機材を公開した。
  ホンダは、二輪・四輪メーカーである特色を活かして、四輪のEVおよびPHV、電動バイク、電動カートを実験に供用。多様なパーソナルモビリティが、地域社会のなかでどのような実用性、利便性を発揮するか検証することにしている。また、車両の技術研究だけでなく、太陽光発電によるソーラー充電ステーションを試験運用し、さらに、スマートフォンを使ってバッテリーの残量や航続可能なエリアを確認し、充電スタンドを検索できるサービスを構築するなど、総合的なシステムを実地に導入しているのが特徴だ。
電動バイクも充電できるこの実証実験を行う地域は、街の特色が異なる「さいたま市」、「熊谷市」、「秩父市」の3エリアとなっており、とくに電動バイクに関しては、さいたま市の中心部において四輪EVとの共同利用をし、都市型移動スタイルの特性を明らかにする予定。また、電動車両の静粛性が住宅地域でどのような価値を持つかの検証も行う。
  さらに、ホンダは熊本県とも協定を結び、埼玉県とほぼ同時期の昨年12月、熊本県内でも実証実験を行うことを発表。「熊本市」、「水俣市」、「阿蘇エリア」、「天草エリア」の4つの地域で取り組み、電動バイクに関しては、市民や観光客にレンタルサービスを行うほか、熊本市ではバイク通学の高校生に電動バイクを利用体験してもらうなど、ユニークな普及啓発にも力を入れていく。静かで滑らかな乗り心地が特長
なお、これら実験に使われる電動バイクは、ホンダが2010年12月にリース販売を開始したビジネスタイプのスクーター「EV-neo」。報道機関向けの試乗会では、「静かで、振動がないところが新鮮。スロットルを空けたり戻したりするときの挙動もスムースで、とても安心感があります」(女性記者)、「出だしの加速もいいし、とくに低重心の“しっかり感”があって力強い」(男性記者)と、評判も上々。今年度はモニタリング活用等に約100台をリリースし、一般企業や個人事業主向けのリース販売は今年4月からの開始となる。

社会の動きとマッチした普及拡大が肝心

こうした自治体による普及促進の施策によって、電動バイクにどのような普及の方向性が生まれてくるのか、大いに関心のあるところ。また、二輪の世界にとって電動バイクがどういった役割を担うのかも気になる。その点について、「EC-03」の開発に携わったヤマハ発動機SPV事業部技術企画部の高橋一樹さんは次のように話した。
  「低炭素社会の実現をめざすという大きな時代の流れのなかで、生活のさまざまなシーンに合わせて、クルマとバイクを積極的に使い分けるというモビリティライフが今後主流になってくると考えています。短距離の移動には、パーソナルコミューターとして、そもそも軽量コンパクトな二輪車が非常に優れているのです。電動バイクの役割は、そうした二輪車の良さを、世の中の人々にあらためて気づいていただくうえでもインパクトがあると思います。そして電動バイクが、今後、本格的に普及拡大していくためには、さらに便利に安心して使っていただくための工夫が必要ですし、充電インフラの整備など、環境対応社会の進度にマッチさせながら息の長い取り組みを行っていくことが肝心と考えています」
  スタートラインに立った電動バイク。これからの普及動向に大いに注目したい。

●問い合わせ先

神奈川県環境農政局環境部交通環境課  電話045-210-4133  
大阪府商工労働部新エネルギー産業課  電話06-6944-6117  
浜松市商工部産業政策課  電話053-457-2044  
埼玉県産業労働部新産業育成課  電話048-830-3736  
熊本県新産業振興局産業支援課  電話096-333-2319  


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