原付から大型バイクまでさまざまな二輪車。原付~普通二輪~大型二輪へとステップアップしていく流れを追って、それぞれの二輪車の持つ利便性や有用性、バイクライフの楽しさを紹介する「二輪車の魅力」を不定期に連載します。
日本では、排気量50cc超~400ccまでを最大とした「普通二輪」がスタンダードな二輪車カテゴリーとして定着している。16歳から免許取得で き、毎年、多くの10代、20代の若者たちが普通二輪の世界にエントリーしてくる。“いつでも、どこでにでも、気軽に使える”のが普通二輪の最大の魅力。 日常の生活の足として、ツーリングの道具として、そのどちらにも使える便利な乗り物としてさまざまに活用されており、製品ラインナップもバラエティに富ん でいる。普通二輪で「生き方が劇的に変わった」と、大きな意義を感じるユーザーも少なくないようだ。
一般に“バイク”あるいは“オートバイ”といわれる乗り物は、道路交通法(道交法)では、「原動機付自転車」(原付)、「普通自動二輪車」(普通二輪)、 「大型自動二輪車」(大型二輪)の3種に分けられる。たいていの場合、二輪免許を取って、本格的なバイクライフは“普通二輪”からスタートする。今回はそ の“普通二輪”の魅力について、いろいろな角度から眺めてみたい。
欧州など西洋諸国において、二輪車といえば排気量50ccを境にして、Moped(原付)とMotorcycle(自動二輪)の2つのカテゴリーが基本になっている。
それに対して日本では1996年に道交法が改正され、Motorcycleに該当する車両が普通二輪(50cc超~400cc以下)と大型二輪 (400cc超)に二分され、それぞれ別の車種として位置づけられた。排気量400ccを最大とする普通二輪は、国際的にはユニークな存在だが、日本では スタンダードなカテゴリーとして定着している。

このため国内でバイクに乗る場合、まずは普通二輪の運転免許を取得するのが一般的だ。法改正で「いきなり大型二輪に挑戦」するのも可能だが、やはりはじめは普通二輪に親しんで、バイクライフをだんだん深めていくのが通常の流れになっている。
とくに、普通二輪の免許年齢は原付免許と同じ16歳からであり、大型二輪免許や四輪の普通免許より2年早く取得できる。若年層にとっては、いちはやく交通社会に参入できる乗り物として、普通二輪は憧れの対象だ。
ちなみに2010年1年間で、普通二輪の免許を取得した人の数は全国で約20万人。そのうち10代は30.8%、20代は42.4%で、合わせると 73.2%にもなる。近年、中高年のバイクブームがよく取りざたされるが、普通二輪のボリュームゾーンは、なんといっても10代、20代の若者たちが占め ていることがわかる。
一方、現在国内で市販されている製品に目を向けると、普通二輪は「125ccクラス」「250ccクラス」「400ccクラス」というふうに、さらにグ ループが分かれている。これらのクラス区分けは、排気量の違いによって当然のことながら車両価格に差が出るし、運転免許、税金、保険、車検の有無、高速道 路(自動車専用道路)の通行可否など、購入したり使ったりするうえで、さまざまな違いがでてくる。

このため、一口に普通二輪といっても、その所有目的や使用実態にはかなりの幅がある。通勤・通学などの“生活の足”として日常的に利用されるものや、 ツーリングなど趣味の乗り物として愛用されるもの、そのどちらにも使われる多目的なものなど、暮らしのなかでの役割や楽しみは、非常に広範にわたってい る。

実際、メーカーのカタログをみると、普通二輪の製品群は、じつにバラエティーに富んでいる。125ccクラス、250ccクラス、400ccクラスそれ ぞれの排気量クラスの特性を活かして、オンロードスポーツタイプ、オフロードスポーツタイプ、クルーザータイプ、ストリートタイプ、スクータータイプ、ビ ジネスタイプ、ほかに競技用マシンも含めると、現在、4社合計で60機種を超える普通二輪が発売されている。

ユーザーは、そうしたさまざまな製品のなかから自分のスタイルに合った1台を選びだすところから、バイクライフの楽しみがスタートするというわけだ。
「“等身大の使い勝手”がいいというか、普通二輪にはいつでもどこにでも気軽に乗って行ける親しさがあって、それがいちばんの魅力です」と話すのは、二輪 専門誌『タンデムスタイル』の斎藤直人編集長。同誌は、これから二輪免許を取る若者や、幅広い年代のビギナーに向けたバイクライフマガジンで、初心者にも わかりやすい誌面づくりで人気がある。
斎藤さんは、「日本の道路環境だと、狭い路地に入って行ったり、ときには高速道路も利用するわけで、250ccクラスや400ccクラスなら、どちらの 道路でもストレスなく走ることができます。高速道路で余裕を求めるとなるとやはり大型バイクになりますが、多様な日本の道路環境にバランスよくフィットし ているのが普通二輪のいいところで、そこが『気軽でいいね』と評価するユーザーが多いのです」と話す。大型バイクのユーザーには、125~250ccクラ スを“セカンドバイク”として、街乗り専用に所有している人も多いが、斎藤さんの説明でそのことにも納得がいく。
斎藤さんはこう続ける。「若い人たちにとっては、価格の面からも現実的なのが普通二輪。大型バイクだと新車で100万円を超えるけど、250ccクラス なら新車でも40万円台で手に入るのがあるから『がんばってお金を貯めよう』と、そう思えるのが普通二輪カテゴリーの大きな特長だと思います」
免許を取得して手に入れた普通二輪。使い道は、日常の用足しにはもちろん、通勤・通学、ツーリングなど、いろいろな目的に活用できる。そして、暮らしのなかにバイクを取り入れることは、使う人によってさまざまな価値にもつながるようだ。
前田明子さん(中野区・34歳)は、都内の玩具店に勤務している会社員。1年半前に普通二輪のAT限定免許を取得して、250ccクラスのスクーターを購入。主にダンスなどの習い事に行くときや、友人の家を訪ねたり、買い物に出かけたりするのに使っている。
「バイクに乗るようになって、劇的に生活が変わりました。ダンススタジオに行くのに、大荷物を持って電車を乗り継いでたいへんな思いをしていましたが、 いったいあの苦労は何だったんだろうって。電車に頼らずに、自分で行きたいときに、行きたいところに行ける自由さは、別世界のみたい」と、前田さんは羽が 生えたような解放感を感じている。
免許取得の動機は、街なかで見かけたビッグスクーター。「カッコいい、あれに乗れたらいいな」と思って、衝動的に教習所を訪ねたという。いざ免許を取得したものの、運転に自信があるほうではなかったから、はじめは戸惑うシーンも多かった。
「なにしろ電車オンリーだったから、自分で車道上を移動していること自体、冒険みたいなものなんですよ。道を間違えたら一貫の終わりという気分なので、 しょっちゅう地図とにらめっこ。冬は寒いとか、雨が降ってきたら濡れるとか、当たり前のことなのに、乗るようになってから気づくというありさまで、そのつ ど装備もしっかりするようになるわけです。そういう一面では煩わしいところも、私にとってはすごく新鮮。バイクに乗るというのは、ちゃんと生きてる実感が するんです」前田さんにとって、バイクに乗り始めたことは生活観、人生観が一変するほど衝撃的なことだった様子だ。
とくに目的があるわけでなく、行き先にあてもないのに、ただ遠くへ行きたいというとき、バイクは格好の乗り物になる。
斜森 隆さん(墨田区・26歳)は、区役所に勤める地方公務員。3年前に普通二輪免許を取得して、現在、250ccクラスのストリートタイプに乗っている。
「もともと原付を愛用していて、あれは便利なんだけど、クルマに脇をどんどん抜かれるのが不満で、結局、二輪免許を取ったんです。さすがに250ccクラスだとパワーがあるし、クルマの流れに乗って走れることに満足しています」と話す。
斜森さんにとって、バイクはもっぱら休日の移動手段で、趣味で所属している野球チームの練習や試合に行くときの足にしている。「あとはツーリングという ほどではないんですが、ちょっと休暇をもらってふらっと遠くへ行ってみようと思うときはバイクが最高。クルマと違って、なんとなくどこまで行けるかなと、 冒険心が沸いてくるんですね。行き先も決めずに出発して、名古屋だとか福島だとかの看板を見て、『いいかげんに引き返さなくちゃ』って、そこで1泊して 帰ってくるわけです」
そんな気楽なバイクの旅は、自然にストレスの解消になって、斜森さんはかなり精神的なリフレッシュになっているという。「バイクは、運転すること自体が 楽しい乗り物ですからね。長距離を走ればもちろん疲れもしますが、ほんとうに心地いい、気分のいい遠乗りが楽しめます」とのことだ。趣味の野球に出かける足として、長距離の走行を楽しむ憩いの足として、斜森さんは恐らく自分でも無意識に、普通二輪の魅力をフルに満喫しているようだ。
普通二輪カテゴリーでは、2000年以降、ビッグスクーターやストリートバイクといった250ccクラスで大きなブームが巻き起こってきた。そうしたタイ プのバイクは、主に街なかの移動に使われるため、2006年ごろから顕在化してきた駐車場不足の影響などもあり、ブームはだんだんに落ち着きをみせてい る。では、いま普通二輪のカテゴリーには、どんな市場トレンドがみられるか、新しいブームの予感はあるか、再び『タンデムスタイル』の斎藤さんに聞いてみ た。
「普通二輪に乗っている最近の若い人たちについて思うのは、“カッコいいから乗る”といったファッション志向より、バイクそのものが好きで、走ることや 旅を楽しみたいという人が増えてきたこと。熱心なファン層が広がってきたのはとてもいい傾向です。それから、大型バイクユーザーのなかには、400ccク ラスや250ccクラスの軽快さに目覚めて、普通二輪を愛車に加える人も出てきています。“ミドルクラスの良さを知る”というゆとりの表れともいえます。 若い層にも中高年層にも共通していえるのは、250ccクラス、400ccクラスのバイクに、スポーツ性やレジャー性をあらためて求め始めた感じがしてい ます」と話している。
斎藤さんの話にはなかったが、125ccクラスも普通二輪の範疇にある。このクラスは主に“生活モビリティ”として普及しているが、近年、市場は拡大傾向にあり、このクラスの利便性についても、ますます認知度アップが期待されている。
このように、普通二輪カテゴリーには話題が豊富にあり、もうじき開催される「第42回東京モーターショー2011」では、ぜひこれからの新しい製品の行方にも注目したいところだ。
一般社団法人日本自動車工業会 交通統括部 電話03-5405-6123
ホームページ www.jama.or.jp
タンデムスタイル編集部(株)クレタ 電話03-5777-7787
ホームページ www.tandem-style.com/
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